2月の夜です。
通帳を開いて、Amazonからの入金を12ヶ月ぶん足しました。150万円くらいあります。
次に、仕入れに使った金額を足します。こちらは138万円でした。
引き算をします。12万円。
「1年やって、これだけか」
あなたがそう思ったなら、計算に1つ足りないものがあります。 そして足りないぶんは、あなたが思っているより多く残っている方向ではなく、税金が増える方向に効きます。
国税庁のページには、必要経費に算入できる金額として、こう書かれています。「総収入金額に対応する売上原価」
「仕入れた金額」ではありません。売上原価です。
この記事では、あなたが仕入れた金額と経費になる金額がどれだけ違うかと、12月に在庫を積んだ年に何が起きるかを出します。在庫を10万円積むと、出ていく現金は115,000円になります。
経費になるのは、売れた分だけです
式は1行です。
売上原価 = 期首の棚卸 + 当期の仕入れ − 期末の棚卸
1年目なら期首はゼロなので、引き算だけになります。
月96個(月10万円)のペースで1年やった場合で見ます。年1,152個、仕入れの合計は1,382,400円です。

回転30日なら、12月31日の棚には96個が残っています。仕入1,200円なら115,200円です。
あなたのこの115,200円は、経費になりません。 まだ売れていないからです。
経費になるのは1,267,200円。仕入れた額との差が、そのまま所得に乗ります。
在庫を10万円積むと、115,000円が出ていきます
ここが、この記事でいちばん見てほしいところです。
売上も、それ以外の経費も変えません。12月に増やした在庫の額だけを動かします。

在庫を10万円積むと、経費が10万円減り、所得が10万円増えます。税金は15,000円(課税所得195万円以下で概算)。手残り1,050円で15個ぶんです。
同時に、その10万円は仕入れに使っているので、現金は10万円減っています。
合わせて115,000円。現金が減った年に、税金が増えることになります。
在庫を積むこと自体が悪いわけではありません。翌年の売上になるからです。問題は、それを決めたあとで知るところにあります。
「12月に安く出ていたら、どうするか」
ここで、あなたの手が止まるはずです。
12月に、いい仕入れが見つかったとします。30万円ぶん。来年の3月には売り切れる見込みで、手残りは26万円くらいになりそうです。
買えば、来年の利益になります。
でも、その30万円は今年の経費になりません。所得が30万円増えて、税金が45,000円増えます。 そして現金は30万円減ります。年末に、345,000円が出ていく判断になります。
「じゃあ買わないほうがいいのか」
そうとも限りません。 26万円の手残りが来年入るなら、45,000円の税金を先に払っても釣り合います。ただしそれは、現金が345,000円出ていっても回る場合だけです。
あなたが判断するには、12月の時点で在庫額と着地が見えている必要があります。
手残りと、帳簿の所得は一致しません
当サイトはずっと「1個の手残り1,050円」で書いてきました。この数字が確定申告の書類でどこに来るかを、並べ直しておきます。

差引は1,324,800円。あなたが感覚として持っている手残り(1,152個 × 1,050円 = 1,209,600円)より、115,200円多く出ます。
差はちょうど期末在庫の額でした。棚に載っているぶんだけ、帳簿の所得は大きくなります。
この115,200円にも税がかかるので、17,280円(17個ぶん)が乗ります。手残りの感覚だけで納税額を見積もると、ここがずれます。
12月に売れた分は、入金が翌年でも今年の売上です
もう1つ、集計でずれやすいところです。
国税庁のページには、収入すべき金額について「年末までに現実に金銭等を受領していなくとも、収入すべき権利の確定した金額になります」とあり、こういう例が書かれています。
「その年の12月20日に商品を売って、その代金は年を越して翌年1月10日に受け取ったような場合には、商品を売ったその年の収入になる」
Amazonの入金は2週間ごとです。12月後半に売れた分は、入金が翌年1月になります。

つまり、あなたが通帳の入金額を12ヶ月ぶん足したものは、その年の売上ではありません。
冒頭で足した150万円が、まさにこれでした。年をまたぐだけなので通算では合いますが、その年の数字としては毎年ずれ続けます。
線は3つです
確定申告まわりで覚えておく線を、当サイトの単位に直します。

1つ目は、給与所得者が申告するかどうかの線とされる所得20万円。手残り1,050円なら年191個・月16個です。
2つ目は、青色申告65万円控除の節税額97,500円。93個ぶんでした。ここは青色申告の記事にまとめてあります。
3つ目は消費税です。

国税庁のページでは、基準期間(個人事業者の場合はその年の前々年)の課税売上高が1,000万円以下なら、原則として納税義務が免除されるとされています。
売値3,000円で割ると年3,334個。月278個です。
当サイトの月◯万円シリーズだと、月20万円(191個・年6,876,000円)は超えず、月30万円(286個・年10,296,000円)は超えます。月30万円のあたりで、2年後に消費税が来るということになります。
ただし同じページに、適格請求書発行事業者(インボイス)の登録を受けている場合には納税義務は免除されないとも書かれています。登録していると、この線は関係なくなります。
想像してみてください
12月10日です。
画面には、いまの在庫が点数と金額で出ています。今年の着地が読めています。 このまま何もしなければ所得はいくら、税金はいくら、というところまで。
そこに、30万円ぶんのいい仕入れが出てきます。
買うかどうかを、数字を見て決められます。 現金が345,000円出ていっても回るなら買う。回らないなら見送る。どちらでも、決めたあとで驚くことはありません。
いま、あなたはこれを3月に知ることになっています。12月にできたはずの判断が、もう終わっています。
同じ在庫、同じ金額です。違うのは、決める前に見たか、決めたあとに知ったかだけでした。
正直に書いておくこと
5つあります。
1つ目。この記事の税額は概算です。 課税所得195万円以下・所得税5%+住民税10%で計算しています。実際は所得控除の内容・課税所得の額・復興特別所得税で変わります。
2つ目。「所得20万円以下なら申告不要」は所得税の話とされていて、住民税の扱いは別と言われています。お住まいの自治体でご確認ください。
3つ目。インボイス登録をしていると、1,000万円以下でも消費税の納税義務は免除されません。 上の線は登録していない場合の話です。
4つ目。青色申告者などには現金主義を選べる特例があるとされています。 届出が要るので、使う場合は要件をご確認ください。
5つ目。当サイトは税務の専門家ではありません。 最終的な判断は税務署か税理士にお願いします。

3つのうち、締切に間に合わなくなるのは2番目だけです。
まずは、いまの在庫額にアクセスしてください
あなたが確定申告のためにそろえるのは、3つです。
- 経費になるのは売上原価(=期首棚卸 + 当期仕入 − 期末棚卸)。仕入れた額ではありません
- 月96個なら期末在庫は115,200円。ここは経費になりません
- 在庫を10万円積むと、現金10万円+税金15,000円=115,000円が出ていきます
- 12月に売れた分は、入金が翌年でも今年の売上(国税庁の例示そのまま)
- 線は3つ。年191個 / 93個ぶん / 年3,334個(月278個)
- 消費税は前々年が基準。ただしインボイス登録があると線は関係なくなります
3つのうち、売上はレポートから取り直せます。領収書は3月に集めても間に合います。

年が明けると出せなくなるのは、12月31日に何が何点あったかだけです。そしてそれが分かっていれば、12月の仕入れを決める前に着地が読めます。
在庫管理くんは在庫を点数と金額で持つツールで、月額1,980円です。手残り1,050円なら月2個で元が取れます。
3月の節税のためではなく、12月10日に「買うか、見送るか」を数字で決めるための道具として使えます。14日間は無料なので、今年の12月が来る前に一度動かしておいてください。
青色申告の中身は青色申告の記事へ。経理ツールの比べ方は会計ツール比較の記事にまとめてあります。
この記事の出典と計算方法:必要経費の考え方は国税庁No.2210 必要経費の知識(令和7年4月1日現在法令等)、収入の計上時期はNo.2200 収入金額とその計算、消費税の納税義務はNo.6501 納税義務の免除(令和7年4月1日現在法令等)によります(いずれも2026年9月8日取得)。青色申告特別控除はNo.2072。税額は「課税所得195万円以下・所得税5%+住民税10%=15%」で計算した概算で、復興特別所得税・所得控除の内容は含めていません。実際の税額と適用の可否は、税務署または税理士にご確認ください。当サイトは税務の専門家ではありません。 個数への換算は当サイト共通の基準値(売値3,000円・仕入1,200円・手残り1,050円・1個20分・時給3,150円・回転30日)を使っています。これらは当サイトが置いた仮定で、商材と習熟度によって変わります。「所得20万円以下なら申告不要」は所得税についての説明で、住民税の扱いは別とされています。 棚卸資産の評価方法、現金主義の特例、インボイス制度の登録判断、事業的規模の判定は扱っていません。制度は変更されることがあります。最新の情報は国税庁のページでご確認ください。
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